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置いたごはんに、口をつけない。においを嗅いで、そのまま離れていく。
2020年3月、推定14歳でうちにやってきたシニア猫・ちーちゃん。腎臓の数値が悪くステージ3、そして大きい歯が1本しかありませんでした。
食が細く、飽きっぽい。そして腎臓病が進むほど、食べる量は落ちていきます。とにかくなんでもいいから食べて欲しい。 その気持ちで、気づけばペットショップのフードコーナーを片っ端から試すことになりました。
この記事は、そのうちウェットフード14種類の記録です。
先にお伝えしておきたいことがあります。猫はもともと食べ物に慎重で、飽きやすい動物だそうです。他の飼い主さんに聞いてみても「あるある」でした。食べてくれないのは、飼い主の選び方が悪いからではありません。
そして、この記事は商品ランキングではありません。「どれが良いか」よりも「どう出すか」のほうが、結果として効いたからです。
先に結論:法則は見つかりませんでした
うちに来た2020年3月から最後の日まで、14種類を試して、私は途中で法則化を諦めました。
ただ、両端だけははっきりしていました。
- グリル仕立てのようなかたまり感があるもの → 一度も食べませんでした
- パテ・クリーム・とろみ・ゼリー仕立て → どれもよく食べました
歯が1本しかなかったので、噛む必要があるものは無理だったのだと思います。
問題はその中間です。フレークやスープは、銘柄によって食べたり食べなかったり。 同じスープ仕立てでも、ある商品は完食、別の商品は口もつけませんでした。
メーカーで絞ることもできませんでした。カルカンとシーバは同じマースの製品ですが、カルカンは最後まで食べ続け、シーバはウェットもドライも一度もダメ。同じ銀のスプーンでも、シリーズによって差がありました。
そして味の好みも、はっきりしませんでした。「この味が好きなのかな」と思って同じ味を買うと、次は食べない。逆にどの味でも食べるシリーズもある。カルカンで味を変えながら続けられたのも、結局「この味が好き」という軸がなかったからだと思います。
もうひとつ意外だったのは、年齢表示があまり関係なかったことです。ちーちゃんが最後まで食べ続けたのは、シニア用ではなく成猫用(1歳から)のパテでした。15歳用と18歳用を並べても、大差は感じませんでした。
食べてもらうための12の工夫
ここがこの記事の本題です。どのフードにも使えて、猫の好みに関係なく効く打ち手です。
出し方の工夫
① お湯を少し足して、柔らかくのばす
黒缶パウチは水分が少なめだったので、お湯を加えて柔らかくしていました。柔らかくなるだけでなく、温かさで香りが立ち、冷蔵庫から出した冷たさも取れます。 一度に3つ解決できる方法でした。
② 電子レンジで、ほんのり温める
お皿に入れたまま10〜20秒弱。温めすぎないよう、必ず指で温度を確かめていました。加熱ムラで部分的に熱くなることがあるので、ここは省略しないほうがいいと思います。
うちで使っていたのは猫壱のハッピーダイニング 脚付フードボウルで、これは陶器製で電子レンジに対応しています。器ごとそのまま温められるので、移し替える手間がありませんでした。真似される場合は、お使いの器がレンジに対応しているか確認してください。
③ フードによって、お湯を足すか足さないかを変える
同じ「シニア猫用パウチ」でも、水分量はまったく違います。カルカンは水分があったのでそのまま、黒缶はお湯を足して。開けてみて決める、が正解でした。
④ 一度に全部出さず、1/3〜1/2ずつ
パウチ1袋をそのまま出すことはありませんでした。食欲が落ちた猫に山盛りは逆効果です。残りはラップをして冷蔵庫へ。70gのパウチなら3回に分けられるので、鮮度も保てて経済的でもありました。
⑤ スプーンで潰す(これは効きませんでした)
ロイヤルカナンの療法食を食べなくなったとき、フレークが硬いのかと思ってスプーンで潰してみました。結果は変わりませんでした。 うまくいかなかった工夫も、同じことを試そうとしている方のために残しておきます。
食べ始めてもらう工夫
⑥ おやつを、ごはんの横に常に置いておく
栄養バランスを考えれば、おやつを出しっぱなしにするのは本来おすすめされません。でも、とにかく食べてくれない時期がありました。気が向いたときに口にできるように、ウェットフードの横に置いていました。
⑦ おやつをドライにかけて、食べるきっかけをつくる
猫は一口食べると、そのまま続けて食べることがあります。だから最初の一口を、確実に食べるもので引き出す。ごほうびではなく、呼び水としてのおやつです。
⑧ 一般食は、総合栄養食と組み合わせる
保護したとき「これを食べていた」と言われた金のだしカップは、よく食べてくれました。でも途中で総合栄養食ではなく「一般食」だと気づきました。やめるのではなく、ドライフードにかけたり、別のお皿に分けて出したり。よく食べるものは残して、栄養は総合栄養食で担保する。 ウェットフードには一般食が多いので、購入前にパッケージの表示を確認してみてください。
続けるための工夫
⑨ 同じブランドの中で、味を変える
カルカンのシニア用は味の種類がとにかく多いです。一つの味を食べなくなったら、別の味に切り替える。これで、飽きが来ても同じシリーズで続けられました。ちーちゃんに「特別好きな味」はなく、ローテーションできることのほうが大事でした。
⑩ ドライフードは、割高でも小分けパックを選ぶ
大袋は開けた瞬間から香りが飛んでいきます。健康な猫なら気になりませんが、食欲が落ちた猫には致命的です。よく食べたドライフードは小分けパックのものでした。香りが最後まで新鮮だったからかもしれません。
ドライフードについては、腎臓病の猫がフードを食べない…実際に試したドライフード9種【正直レビュー】に9種類ぶんの記録をまとめています。
環境の工夫
⑪ 夏は、フードボウルの下に保冷剤を置く
置き餌をしたいけれど、夏は傷むのが怖い。そこでキャンプ用の保冷剤をフードボウルの下に敷いていました。 少量ずつ出すことと組み合わせて、ようやく「常に置いておく」が成立しました。
⑫ 高さのある器を使う
うちで使っていた猫壱の脚付フードボウルは、名前のとおり脚がついていて高さがあります。 床に直接置いた器だと、猫は首を大きく下げて食べることになります。シニアになると、この姿勢がつらくなるそうです。
高さのある器なら自然な姿勢のまま食べられます。フードを変える前に、器を見直すという手もあると思います。しかも陶器なので、そのままレンジで温められました。
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ここまでの12個は、どれも特別な道具を必要としません。 お湯、電子レンジ、ラップ、冷蔵庫、保冷剤、そして器。家にあるもので始められます。
買い方の工夫:まず1個だけ買う
ネット通販のウェットフードは、12袋・16袋といった箱単位が基本です。食べてもらえなければ、全部無駄になります。
そこで私は、まずホームセンターやドラッグストアで1個だけ買って試し、食べたらネットで箱買いという順番にしていました。これだけで、試せる種類が何倍にもなります。
実際、最初のころはほとんどホームセンターで買っていました。1個ずつ選んで、帰って出してみて、だめならまた別のものを。その繰り返しです。
無駄になるのはお金だけではありません。食べてもらえなかった箱が戸棚に残っているのを見るのは、地味にこたえます。
とくに療法食は1個あたりの値段が高いので、動物病院で1〜2袋だけ分けてもらえないか相談する価値があります。
試した14種類の正直レビュー
✅ よく食べた
カルカン パウチ やわらかパテ(成猫用・総合栄養食・パテ)
11回リピート購入しました。ちーちゃんが終末期の直前まで食べ続けた、いちばんの定番です。香りは普通なのに、これはよく食べました。噛まずに食べられるパテだったことが大きいと思います。※当時のパッケージは終売し、現在は新シリーズに切り替わっています。
カルカン パウチ シニア猫用 15歳から/18歳から(総合栄養食・とろみ/ゼリー)
15歳用も18歳用も買いましたが、大差は感じませんでした。味の種類が多いのが最大の強みで、飽きたら別の味に。安価で経済的だったので、毎日のごはんとして続けられました。水分があるのでそのまま出せます。
アイシア 黒缶パウチ 15歳頃から(総合栄養食)
香りが強め。そのおかげか、食欲が落ちていたちーちゃんもよく食べました。水分が少なめなので、お湯を少し足して柔らかくしていました。
いなば 金のだしカップ 11歳から(一般食・とろみ)
保護したときに前の飼い主さんが与えていたフードです。水分多め、香りも良く、よく食べました。ただし一般食なので、総合栄養食と組み合わせて使っていました。
アイシア ミャウミャウ ジューシー 15歳頃から(総合栄養食・ゼリー)
リニューアル前のものを気に入って食べていました。商品が新しくなってからも買いましたが、以前と違うと感じたのか、あまり食べなくなってしまいました。
🟡 まぁまぁ食べた
銀のスプーン 三ツ星グルメパウチ フレーク 15歳頃から
食べましたが、同じシリーズのドライフードのほうが好きだったようです。銀のスプーンの中では、三ツ星グルメシリーズがお気に入りでした。贅沢猫だったのかもしれません。
味の種類がいくつかありますが、どの味でも同じように食べてくれました。フレーバー選びで迷う必要はなかったです。
銀のスプーン ウェットパウチ シニア 15歳頃から(総合栄養食)
こちらもまぁまぁ。三ツ星グルメと比べると、反応は一段落ちました。
モンプチ スープパウチ 高齢猫用(一般食・スープ)
香りが良く、比較的食べてくれました。ただスープ仕立てで水分が主なので、ごはんというより水分補給という位置づけでした。
△ わずかしか食べなかった
ピュリナワン パウチ 健康寿命ケア 7歳以上(総合栄養食・小さめフレーク)
香りは、人間の私には良いと思えました。 でも食べ残しが多く、わずかしか口にしませんでした。「食べやすい小さめフレーク」と書かれていましたが、歯が1本のちーちゃんには当てはまらなかったようです。
❌ 食べなかった
フィリックス パウチ やわらかグリル 15歳から
香りは普通。気の進まないものは絶対に食べない子でしたが、これは全然ダメでした。「やわらか」とありますが、グリル仕立てでかたまり感があります。
メディファス スープ 15歳から(下部尿路・pHコントロール)
何度か出しましたが、一度も食べませんでした。 スープ仕立てで噛む必要はないのに、です。何がキライなのか、聞きたいほどでした。
シーバ アミューズ ウェット 18歳以上 お魚スープ
全然手をつけませんでした。 シーバはウェットもドライも両方試して、どちらもダメでした。
ロイヤルカナン 腎臓サポート ウェットパウチ(療法食)
においが強めで、最初は香りにつられてまぁまぁ食べていました。 でも途中から全く食べなくなりました。フレークが硬いのかと思ってスプーンで潰す工夫もしましたが、戻りませんでした。高かったのに。
ヒルズ 腎臓ケア k/d ツナ&野菜入りシチュー(療法食)
全く食べませんでした。 スープの香りは人間的には美味しそうだったのですが。こちらも高かったのに、と思ってしまいます。
14種類の比較早見表
| 商品 | 形状 | 栄養区分 | 内容量 | 反応 |
|---|---|---|---|---|
| カルカン やわらかパテ(成猫用) | パテ | 総合栄養食 | 70g | ✅ 11回リピート |
| カルカン シニア猫用 15歳/18歳から | とろみ・ゼリー | 総合栄養食 | 60g | ✅ |
| アイシア 黒缶パウチ 15歳頃から | 水分少なめ | 総合栄養食 | 70g | ✅ お湯を足して |
| いなば 金のだしカップ 11歳から | とろみ | 一般食 | 70g | ✅ |
| ミャウミャウ ジューシー 15歳頃から | ゼリー | 総合栄養食 | 70g | ✅ 旧/❌ 新 |
| 銀のスプーン 三ツ星グルメパウチ | フレーク | — | 35g | 🟡 |
| 銀のスプーン ウェットパウチ シニア | フレーク | 総合栄養食 | 55g | 🟡 |
| モンプチ スープパウチ 高齢猫用 | スープ | 一般食 | — | 🟡 |
| ピュリナワン 健康寿命ケア 7歳以上 | 小さめフレーク | 総合栄養食 | 50g | △ |
| フィリックス やわらかグリル 15歳から | グリル | 総合栄養食 | 50g | ❌ |
| メディファス スープ 15歳から | スープ | — | 40g | ❌ |
| シーバ アミューズ 18歳以上 お魚スープ | スープ | 一般食 | 40g | ❌ |
| ロイヤルカナン 腎臓サポート ウェット | フレーク | 療法食 | 85g | 最初だけ → ❌ |
| ヒルズ k/d 腎臓ケア シチュー | シチュー | 療法食 | 82g | ❌ |
※栄養区分は各メーカーの公式情報にもとづいています。確認が取れなかったものは「—」としました。購入前にパッケージの表示をご確認ください。
こうして並べてみると、上のほう(パテ・とろみ・ゼリー)に「よく食べた」が集まり、下のほう(グリル・スープ)に「食べなかった」が集まっているのがわかります。ただしフレークとスープは上にも下にもあって、ここが銘柄次第だったところです。
療法食は、食べてくれませんでした
腎臓病と診断されると、療法食を勧められます。私も期待して買いました。結果を正直に書きます。
| 商品 | 形態 | 反応 |
|---|---|---|
| ロイヤルカナン 腎臓サポート | ウェット | 最初だけ → 全く食べず |
| ロイヤルカナン 腎臓サポート | ドライ | ❌ |
| ヒルズ k/d 腎臓ケア | ウェット | ❌ |
| ヒルズ サイエンスダイエット 14歳以上 | ドライ | ❌ |
二大メーカーを、ドライとウェットの両方で試して、4つとも食べませんでした。
表のうちドライフードの2つについては、ドライフード9種を試した記録で他の銘柄と比べながら書いています。
そして療法食は高いです。普通のパウチが1袋100円前後なのに対して、ロイヤルカナンは1袋375円、ヒルズは1缶500円。食べてもらえなければ、そのまま捨てることになります。腎臓病の猫との生活は通院も検査も投薬もあって、ただでさえお金がかかります。その上で、食べないフードに数千円が消えていく。
獣医師に相談したうえで、私は何度も「食べない療法食」より「食べる普通のフード」を選びました。正解だったのかは、今でもわかりません。 でも、まず食べてもらわないことには始まらなかったのです。
同じことで悩んでいる方は、ご自身で判断する前に、かかりつけの獣医師に相談してみてください。食べてくれる猫もいますし、フード以外の選択肢を提案してもらえることもあります。
選ぶときに知っておきたい3つのこと
① 定番が、ある日終売になる
ちーちゃんが11回リピートしたカルカンのやわらかパテも、金のだしクリームも、今はもう買えません。 キャットフードの入れ替わりは速いです。だから「この商品を買えばいい」ではなく、「こういう形状のものを選ぶ」と覚えておくほうが役に立ちます。
② 急に食べなくなったら、リニューアルを疑う
ミャウミャウは、商品が新しくなった途端に食べなくなりました。
昨日まで食べていたのに今日は食べない。腎臓病の猫と暮らしていれば、真っ先に「悪化したのでは」と思います。でも原因がフードのリニューアルだったということもあります。パッケージに「新」「リニューアル」の表記がないか、確認してみてください。
③ 「美味しそう」は、飼い主の感覚
ピュリナワンもヒルズも、人間の私には良い香りだと思えました。 でも食べませんでした。逆に食べたのは、香りが普通のカルカンのパテでした。
猫の嗅覚は人間とは比べものになりません。パッケージや香りで「これなら食べそう」と判断するのは、あまり意味がなかったと思います。
まとめ:正解はなかった。でも打ち手はあった
最初から最後まで、フード選びの悩みは尽きませんでした。
2020年3月から最後の日まで、14種類試して、法則は見つかりませんでした。メーカーでも、ブランドでも、味でも、年齢表示でも絞れませんでした。なにせ猫なので、気分屋です。
それでも、やれることはありました。
お湯でのばす。ほんのり温める。少しずつ出す。味をローテーションする。小分けを選ぶ。おやつで呼び水をつくる。夏は保冷剤を敷く。高さのある器にする。まず1個だけ買って試す。
これらは猫の好みに関係なく効きます。 どれが食べてもらえるかはわからなくても、試せる回数を増やすことはできる。それが、ちーちゃんと過ごした時間でわかったことです。
もしいま、食べてくれないごはんを前にしているなら。あなたの選び方が悪いのではありません。 どうか、ご自身を責めないでください。
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